一大決心して大学院に進学したら、なぜか指導教官の外科医に溺愛されてます
坂上先生が、息を止めて画面を凝視している。
御崎先生は、まるで自分の甥っ子でも自慢するかのように、画面の一点を指差して目を細めた。
「……うん、いた。ちゃんと、手足がもう出てる」
「え……」
「ここが頭。背骨。……で、これが腕だね」
言われてみれば、小さな突起がもぞもぞと動いているのが分かる。
まだ人の形とは言えないかもしれない。
けれど、そこには確かに意志を持って動く「生命」の形があった。
「あぁ、ほら。今、動いた」
御崎先生が嬉しそうに声を上げた。
私の胎内ではまだ何も感じない。けれど、画面の中の小さな影は、「ここにいるよ」と主張するように、力強く跳ねた。
トクトクトク……。
スピーカーから流れる心音が、その動きに合わせて高鳴る。
「……こ、いつ……」
坂上先生の声が震えた。
彼は無意識に手を伸ばし、モニターに触れようとして──指先を止めて、拳を握りしめた。
その目には、外科医としての冷静さは欠片もなく、ただ圧倒された父親の色だけがあった。
御崎先生は、そんな私たち二人と、画面の中の小さな命を交互に見つめ、ふと柔らかく呟いた。
「……可愛いな、男の子かな?」
「……男、の子……」
「なんとなくな。……ほら、元気に暴れてるところなんか、誰かさんに似てやんちゃそうだ」
御崎先生は悪戯っぽく坂上先生を見た。
男の子。
私と、坂上先生の子供。
いつか彼のように、不器用で、口が悪くて、でも誰よりも優しい男の子が、私の腕の中にやってくる未来。
その光景が、あまりにも鮮明に想像できてしまって。
私は溢れ出す涙を止めることができなかった。
「……おめでとう。元気だよ」
御崎先生はプローブを置き、静かに告げた。
その「可愛いな」という呟きが、医学的な診断以上に、この子が「愛されるべき存在」であることを証明してくれた気がした。