一大決心して大学院に進学したら、なぜか指導教官の外科医に溺愛されてます
約束
連絡を受けて踏み入れた夜の公園は、静まり返っていた。
街灯が頼りなく揺れ、ベンチに座る私の手元を青白く照らしている。
砂利を踏む音がして、顔を上げる。
息を切らした坂上先生が、そこに立っていた。
「……待たせて、悪かった」
第一声は、謝罪だった。
その声は低く、そしてひどく乾いていた。
彼の表情は、いつもの自信に満ちたものではなく、どこか憔悴し、追い詰められたように強張っている。
(……あぁ)
私は、膝の上で拳を握りしめた。
覚悟を決める。
(……終わるんだ)
この1週間、連絡がなかったこと。
目を合わせようとしなかったこと。
そして今、この深刻な表情。
全ての状況が、一つの結論を指し示している。
『君のことは好きだけど、今の俺には荷が重い』
『キャリアを捨てられない』
『堕ろしてほしい』
どんな言葉が来ても、泣かないようにしよう。
御崎先生が言ってくれた、「ウチに来い」という言葉をお守りにして。
私は毅然と、彼の「さよなら」を受け入れようとしていた。