風に舞う桜
いま、どこにいるの?
そう友達へメッセージ送ると、10秒も経たないうちに手に持っているスマホが震えた。
『桃子こそ どこにいるの?あたしがそっちに行くよ』
どうやら、友達が来てくれるらしい。
えー、と。
ここは、どこだっけ?
「おう、か?」
展示物を保護しているガラスケースの後ろの壁には、桜花(おうか)と書かれていた。
桜の、花?
航空特別兵器で、機首に1トンを超える大型徹甲爆弾を搭載した小型のグライダーであり、母機の一式陸上攻撃機につるされる。敵艦に近づくと母機から分離し、敵の防空網を突破して敵艦に体当たりする。搭乗員の脱出装置も不時着用の車輪もなく、母機から切り離された時点で搭乗員は絶対に生きて帰れない。
桜花と書かれた文字の横には桜花の説明文と共に、
搭乗員らしき人物の写真が数点飾られている。
どの人も、今の私と そう変わらない年齢に見えた。
視線を写真からガラスケースに入っている展示物へと落とす。
どうやら、手紙のようだ。
「せりざわ、...」
展示されている手紙の横に置かれてあるプレートに書かれている名前を、私はそっと呟こうとした。
その瞬間。
背後に気配を感じ、バッと振り返ると
そこには、先ほどまで座っていたはずのおばあさんが立っていた。
(引用:「今につながる日本史 戦争特集」讀賣新聞オンライン)