甘々とロマンス中毒
「(あ。一咲が溶けた)」

涙を我慢する私の、ひりひりした心も露知らず。
あやちゃんは後ろから覗き込んで私を見やる。

一文字に結んだ唇の口角が上がる。視線を遮る前髪を、あやちゃんがその少しの束だけ掬って横に流した。口元が、ゆる…と解けて「…ぁ」と、声がくぐもった。

「一咲便、ハンバーグ以外も欲しい。ダメ?」

どうしよう。ほんとは、ダメなのに。
今日の甘々なあやちゃんは危険だから、これ以上流されちゃいけないのに。

「ダ(メ)…じゃない。なあに?」

自分から、その蜜を吸いに踏み込んでしまう。

「気分転換、付き合って」

新たなご要望に瞳がかちと瞬いた。

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

「あー、癒されるわ」

あやちゃんの気分転換に付き合って、一時間と少し。
Switchのマリオカートを終えて、只今、子猫が毛布をふみふみしてる動画を見ている最中です。

「(かわいい…っ、がすぎる!)」

二人ともテレビに流れる赤トラの子猫に夢中である。

「可愛すぎて、泣けてくんね」

あやちゃんの腕がお腹の少し上辺りに触れる。

「(わぁ〜〜っ。後ろからぎゅうされてる。…あやちゃん専用のぬいぐるみ…?みたい)」

胸中で、ことんと首を倒した。心臓がバクバクして苦しいのに、ほんのり甘い。

振り返り、あやちゃんを見上げた先、視線がぶつかった。

「シュークリーム食べる?」

「わーい、やったぁ」

……じゃない!

私がおもてなしするはずなのに、おもてなしされちゃってる。
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