年下研修医の極甘蜜愛


「大丈夫?」


 サラリーマンたちから遠ざかったところで手を離して、顔色をうかがう。彼女は、困ったような顔で首をかしげて小さく謝罪の言葉を口にした。


「すみません」


 彩の謝罪に、仁寿の心がちくりと痛む。大学生のころは、もっと気さくに接してくれていたような気がする。やっと同じ場所で一緒に仕事をできる間柄になったのに、今度はお互いの立場が障壁になったのだと痛感したからだ。物理的な距離と違って、自分ではどうにもできない溝のようなものを感じて、もどかしい気持ちにもなった。だから、駅に着いて別れ際、仁寿は思い切って告白した。


 ――彩さんが僕の気持ちを知ったら、なにかが変化するかもしれない。


 そんな淡い期待をしながら。そして――。


「……あ。先生のお気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい」


 仁寿の気持ちを聞いた彩は深々と頭をさげ、申し訳なさだけを残して去っていった。ライトアップされた駅前の桜並木が夜風に花弁を散らして、頭上の星空もきれいで、なんというかすごく幻想的で風流な失恋だった。もしも仁寿が平安貴族だったなら、百人一首に選ばれるような美しい名歌を詠めたのではないだろうか。

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