年下研修医の極甘蜜愛
第四章

出張先で、大人のデート



 ――冬なのに、花火? 


 小首をかしげ、彩はスマートフォンを手に窓から外を眺めた。ビジネスホテルの七階からは、すっかり陽が落ちた冬の空と星、都市の夜景、ふわりふわりと綿のように舞う雪が見える。

 仁寿からまたメッセージが届いて、ロビーで待っているというので、急いでメイクを直してハンドバッグと部屋のカードキーを手に慌ただしく部屋を出た。無人のエレベーターの中でコートを羽織る。ロビーにおりると、中央にある大きな観葉樹の近くで仁寿が待っていた。


「すみません、お待たせして」

「大丈夫。僕もさっきおりて来たところだよ」


 彩は、背高い仁寿の顔を見あげて、全身を観察するように視線をその足元までさげた。ボタンを留めた黒のチェスター・フィールドコートの襟元から覗く、白いワイシャツと青いネクタイ。膝丈のコートの下は、黒いスラックスに磨かれた黒い革靴。

 そのスラックスも、ビジネス用スーツのそれでなくて、どう考えても花火を見にいくような装いではない。それに、私服やスクラブのイメージが定着しているから、スーツ姿はとても新鮮で、急に年を追い越されたような印象まで受ける。


「先生。どうして、フォーマルな格好をなさってるんですか?」

「二十四歳最後の夜に、彩さんと大人のデートをしてみたくて」
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