年下研修医の極甘蜜愛
今まで、医師との出張なんて数えきれないほど経験したのに、呼び方まで気にしていなかった。出張先で街を歩いたり観光をしたり、医師と二人きりでは滅多に業務外のプライベートなお出かけをしないからだろう。父親くらいと年齢の医師とは美術館に行ったり、女医だと一緒にご当地の有名処で贅沢な食事を楽しんだりするけれど。
しかし、本人が嫌だというのなら、それに合わせてあげたほうが気兼ねなく過ごせていいのではないだろうか。誕生日だものね、と彩は頷く。
「分かりました」
「練習する?」
「そうですね。えっと……、ふ、藤崎さん?」
「だめだめ。大人のデートなのに、それだと他人行儀だよ。なんだか疑問形になっちゃってるし」
「さっきと要求が変わっていませんか?」
「変わってないよ。だって僕、名前で呼んでってちゃんと言ったもん」
「あ……っ」
「ね?」
ふふっと仁寿が軽やかに笑う。彩は、ごにょごにょと口ごもって、小さな声で「仁寿さん」と言った。男の人を名前で呼ぶ習慣がないから、すごく恥ずかしい。理由は多分、それだけではないけれど……。
「彩さん、心配しないで。何事も、慣れてしまえばなんてことないからね。それから、今夜は仕事の話はナシだよ」
「は……、はい」
「じゃあ、行こう!」
仁寿が、肘を曲げて右腕を彩に差し出した。今度は、腕を組めといっているのだろうか。彩は、周りを見回して遠慮がちにそっと仁寿の腕に手を添える。