年下研修医の極甘蜜愛


「藤崎様がチェスターコートをお召しでしたので、同じシルエットのものを選んでみました。いかがでございましょう」


 ノースリーブの肩に、店員が黒いコートを掛ける。ドレスの裾が少し見えるくらいの膝上丈のそれを羽織ると、かわいいドレスの雰囲気にクールな印象が加わって、大人かわいいスタイルが出来上がった。コートの上襟につけられた二つのブリリアントストーン・ブローチが、真っ暗な夜空に輝く双星みたいでとてもきれいだ。


「お気に召されましたか?」


 よく似合っておられますよ、と鏡越しに言われて、彩ははにかんで首を縦に振る。


「バッグは大きさや色、形なども申し分ございませんので、お持ちのもので大丈夫ですよ。藤崎様のネクタイの色ともお似合いだと思います」

「……はい」


 彩は、店員の言葉の意味を理解できないまま、なんとか気持ちを落ち着かせる。


「着て来られた服と靴は、わたくしどもがお預かりして宿泊されるホテルへお届けしておきます」

「ありがとうございます」

「素敵な時間をお過ごしくださいませ」


 まるで魔法をかけるかのように店員がほほえみかける。
 肩に掛けられたコートに袖を通して店に戻ると、ソファーに座っていた仁寿が駆け寄って来た。

 店員に礼をいい、仁寿が再び彩の手を握る。店員に見送られて店を出ると、一台のタクシーが二人を待っていた。ロンドンの街から来たようなブラック・キャブだ。それに乗って着いた先は、海沿いに建つ高級ホテル「Laule'a(ラウレラ)」だった。

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