年下研修医の極甘蜜愛
誕生日プレゼント
訪れるのも見るのも初めてだが、彩はラウレラをよく知っている。世界的に有名なアメリカの建築家が設計したホテルで、大学在学中に建築構造デザインの授業で取りあげられたからだ。
湾を一望できるシーサイドに建つ、全客室オーシャンビュー。グランドオープンした八年前に、国の機関に設置されたなんとか委員会から、景観が美しい建築の大賞を授与されたのも当時は話題になった。
「とりあえず、状況説明をしていただいてよろしいでしょうか」
和のテイストと西洋の文化が融合したような豪奢な意匠のエントランスに向かいながら、彩は周囲に聞こえないように神妙な面持ちで声をひそめる。
空港から直通の地下鉄に直結していて、演劇ホールやショッピング施設などもあるシーサイドは、季節や日にちを問わず、いつもたくさんの観光客でにぎわっている。特に今夜は週末で、演劇ホールでのオペラや埠頭での花火などのイベントが予定されているから、ラウレラもその周辺施設も大変な人だかりだった。
行きかう人を見れば、きちんとした服装に身を包んだ男女のペアばかり。はたから見れば仁寿と彩も他の観光客と同じで、チェスターコートと青のワンポイントでセミフォーマルにリンクコーデされた恋人にしか見えない。
「状況説明するほどの特別な出来事は起きてないから、安心してよ。おいしくて体に優しい夜ご飯を食べて、きれいな花火を見る。ただそれだけ」
「ただそれだけっていう服装でも場所でもないですよ?」
「それはほら、大人のデートだからさ」
仁寿が、茶目っ気たっぷりに片目をつぶってみせる。