年下研修医の極甘蜜愛

 先日、彩は仁寿が研修で一カ月お世話になった精神科専門病院の指導医と電話で話す機会があった。研修の評価の話だったのだが、仁寿の前向きで明るい性格について、彼は精神科の診察室にはちょっとまぶし過ぎるかもれしないと笑いながら冗談を言われたのを思い出して、彩は思わず小さく吹きだしてしまった。


「どうしたの?」

「いえ、ちょっと思い出し笑いをしてしまって。それにしても、冬に花火なんてめずらしいですね」

「この辺りは観光業で栄えている街で、とにかく観光客向けの派手なイベントが多いんだよ。花火も夏と冬にあって、冬は十二月の第二土曜日の夜八時過ぎ、埠頭沖から打ちあげるんだ。確か一万五千発だったかな。今年は諸般の事情でクリスマスにもするんだって。冬は空気が乾燥して澄んでいるから、花火の閃光が目にも鮮やかですごく美しいよ。僕は、夏より冬の花火のほうが好きだな」


 彩は、大学生時代に友人と月島から見た東京湾の花火を思い出しながら、仁寿の話に耳を傾ける。六年を過ごしただけあって、仁寿はこの土地について相当詳しいらしい。大学生のころの楽しいエピソードを交え、どうしてラウレラを選んだのかを教えてくれた。この周辺では、ラウレラからのロケーションを超える場所は他にないそうだ。


「地上から眺めてもいいけど、今は感染症の流行時期で彩さんも僕も仕事柄人混みは避けた方がいいし、お酒でも飲みながら周りを気にせずゆっくりしたいと思ってさ。部屋が空いてないかもって心配したけど、まだ本格的なクリスマスシーズンじゃないからかな、希望の部屋を予約できてよかった」


 今回、仁寿の研修医会出席が決まってから、一週間ほどしか時間はなかった。その短期間に、プレゼン用のポートフォリオを用意して、花火の予定を調べ、洋装店に連絡をして、ラウレラの予約までしたのだろうか。


 ――精神科研修が終わって救急の研修が始まったばかりの、慌ただしいスケジュールの最中に? なんでも器用にこなしそうな先生が、時間が足りないって言うほど大変だったんじゃなかったの?


 彩は、仁寿の隣を歩きながらぐるぐると考えを巡らせる。
< 127 / 183 >

この作品をシェア

pagetop