年下研修医の極甘蜜愛
出張に関係する連絡とその合間に仕事とは関係のないプライベートなやり取りもしていたのに、全然そんな素振りを見せなかった。もちろん、服や足のサイズは一度も聞かれていない。それなのに、ドレスも靴もぴったりで、靴はちゃんとローヒールだ。ヒールの高い靴は仕事をするのに動きにくくて不向きだし、もともと苦手だから、公私問わずいつもローヒールのパンプスを履いている。
――自惚れかもしれないけれど……。
内心で前置きをして、自分の足元に視線を落とす。もしかして、それを知っていて靴までそろえてくれたのかな。それから、わたしのバッグに合わせて青いネクタイをして――。
「彩さん」
エントランスが近くなって、仁寿が腕を差し出した。彩はハンドバッグを右腕に掛けると、もう片方の腕を仁寿の腕に絡ませる。ビジネスホテルを出発した時のような戸惑いはない。彩は、屈託のない仁寿の笑顔に、大人のデートを楽しもうと決心した。
埠頭沖から打ちあげられた最初の花火が夜空に虹色の閃光を放ったのは、二人がラウレラの高層階にあるレストランでフランス料理のフルコースに舌鼓をうっている時だった。満席の店内に一瞬、感嘆のどよめきが起きる。ナイフで小さく切り分けたヴィアンドの牛肉を堪能しながら、彩は花火に向かって表情で「きれい」と言った。
「ここから見る花火は格別だろうと思っていたけど、想像以上にきれいだなぁ。普段、空をゆっくり眺める機会がないから、たまにはいいよね」
笑顔で頷いて、彩が赤ワインを口に含む。デセールの甘いベリーケーキとディジェスティフのポルトワインまで飲み終わると、二人は仁寿が予約した階下のスウィートルームに向かった。仁寿いわく、高層階より中層階のほうが花火を眺めるにはいいらしい。
「あの……。前にどなたかと来たことがあるんですか?」