年下研修医の極甘蜜愛
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彩がぼんやりと目を開けると、窓から見える景色は一面真っ暗だった。もう花火は終わってしまったのだろう。静かで、なにも聞こえない。何時なのだろうと時計を探して目を動かす。すると、サイドテーブルにデジタルの時計が置いてあった。
二十三時五十六分。
日付が変わる直前。今日が終わる時刻だ。
起きあがろうとして、背中に仁寿がくっついているのに気づく。さらに、腹部に腕が巻きついていたので、このまま横になっておくことにした。長距離を移動して、そのあともいろいろとあって疲れているだろうし、明日は研修医会を控えている。大事な休眠を邪魔したくない。
彩は、腹部に巻きついている仁寿の腕をたどって、その先についている左手をそっと握って顔に近づけた。
人の体に管を入れたり切ったり、他にも様々な処置や手術をするから、特に外科医はこまめに爪を切る。仁寿の爪も、指先から出ない長さに切りそろえられていた。
――きれいな手だなぁ。
骨格や血管が浮き出ていて、いかにも男性らしい手をしているのに、肌が白くてつるつるしている。最近は男性もスキンケアをすると聞くから、もしかしたら彼もしているのかもしれない。そうでなければ、頻回の手洗いとアルコール消毒を繰り返す仕事でこんなにきれいな肌は保てないと思う。顔の肌もきれいにしてるもんなぁ、と少しうらやましい気持ちになる。
彩は、もう一度サイドテーブルの時計に目をやった。まもなく、午前零時。日付が変われば、仁寿の誕生日だ。息をひそめて、じっとその時を待つ。
ぱっとデジタルの表示が切り替わり、ゼロが並んだ。
「おめでとうございます、仁寿さん」
彩は、小さな声でつぶやいて仁寿の手にキスをした。仁寿がしてくれたように、薬指に二回そっとくちづける。そして、仁寿の手を布団の中に戻して目を閉じた。
スマートフォンはハンドバッグの中だ。マナーモードにしているから、セットしている目覚ましのアラームも鳴らない。目覚ましがないのは不安だが、あの大きな窓から朝日が差し込めば、嫌でも目が覚めるだろう。
――ああ、このクッションすごく柔らかくて気持ちいい。
リゾートホテルのクッションに頬ずりをすると、すぐ眠気に襲われるから不思議だ。まぶたが重たい。背中にくっついている仁寿の体温の心地よさとセックスの気怠い余韻が相まって、彩はすぅっと眠りに落ちてしまった。
だから気づかなかった。背後で仁寿が喜びに打ち震え、でも声をかけるにかけられず、目に涙をためて身悶えていたことを――。