年下研修医の極甘蜜愛

 体に残っている昨夜の跡に赤面しながらシャワーを浴び、心を落ち着かせながらパウダールームでアメニティを物色する。

 メイクの道具は、ビジネスホテルに置いて来ている。ハンドバックにいつも入れているポーチには、リップと化粧直し用のフェイスパウダーしか入っていない。とりあえず、アメニティの中から化粧水と乳液を拝借して肌を整える。デパートの化粧品売り場で見かける、タイのスキンケアブランドだ。手の平サイズのボトルを傾けて化粧水を手に垂らすと、柑橘系の香りが鼻腔を爽やかにくすぐった。


 ――うーん、いい香り。


 化粧水と乳液を順に顔に染み込ませて、ドライヤーで髪を乾かす。小学生の時からずっと長かった髪を、肩に少し掛かるくらいのショートボブにしたのはいつだったか。確か、一昨年の秋くらいだったと思う。気分転換というより、日頃の手入れにかかる時間をなくしたいというのが理由だった。

 ドライヤーの性能がいいと、乾いた髪の手触りがいい。髪を乾かし終わると、次は下着をつけてストッキングをはく。オープンクローゼットに掛けておいたカクテルドレスを着れば、一応の身支度は終わりだ。

 普段の彩は、身だしなみ程度の控え目なメイクしかしない。大学生のころは年相応におしゃれに興味があって、友達とかわいいコスメを買って見た目に気を遣っていた時期もある。

 しかし、就職を機にそういった自分を華美に飾る作業に時間を費やすのがもったいなくなってやめた。それだけ、医局秘書の仕事に打ち込んでいたということだ。

 とはいうものの、すっぴんではやはり肌のトーンや眉の濃さが気になる。


 ――ビジネスホテルに戻ったら、急いでメイクしなくちゃ。


 研修医会は、午前十時からF大近くにある病院の会議室で行われる予定だ。
 使ったタオルやバスローブをきれいにたたんで、備えつけのランドリーボックスに入れる。彩は、パウダールームとバスルームに使用済みのタオルなどが放置されていないかを確認してリビングルームに向かった。
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