年下研修医の極甘蜜愛
リビングルームのガラステーブルには、昨夜仁寿と堪能したアンリ・ジローのブラン・ド・ブラン、シャルドネのヴィンテージが置かれたままになっていた。非常に、非常に残念だが、一度栓をはずして常温に長く置いたシャンパンは飲めない。
お酒が好きな彩は、後ろ髪を引かれる思いでリビングルームの隅にあるミニキッチンのシンクにシャンパンを流す。
スウィートルームにある洗面鉢もそうだが、ラウレラのスウィートルームの水回りに使われているボウルは、すべて日本の有名な窯元の陶芸家が手掛けた逸品だ。
彩がブラン・ド・ブランをこぼしたシンクは、有田焼のそれだった。今でも建築に興味があるから、内装のデザインや細かな意匠につい目がいってしまう。
小さいころ、幼稚園から帰った彩の居場所は、自宅のすぐそばにある父親の設計事務所だった。そこで、仕事帰りに母親が迎えに来てくれるのを待っていたのだ。時には、父親に連れられて住宅やビルの建築現場へ行く機会もあった。その影響もあって、彩が建築士を目指したのは必然的だったのだろう。今でも時々、父親が建築士を続けていたら……、と思う時がある。
――お父さんと一緒に仕事をしてみたかったなぁ。
彩の父親は、誰よりも彼女が建築士になるのを楽しみにしていた。彩が思うように、父親も愛娘と一緒に仕事をしてみたかったに違いない。
テーブルに空になったシャンパンの瓶を置いて壁に掛かっている時計を見ると、起きて一時間ほどが経過していた。地平線から顔を出したオレンジ色の朝日が、煌々と部屋を照らし始める。
そろそろ仁寿を起こそうとベッドルームへ行く。すると、バスローブを着た藤崎仁寿二十五歳になりたてが、窓辺に立って気持ちよさそうに背伸びをしていた。