年下研修医の極甘蜜愛


 研修医会には、五つの病院から総勢十二人の研修医と数名の指導医が参加する。研修医が一人ずつ症例をプレゼンして、それについて指導医からの指摘やアドバイス、他の研修医との意見交換があるから、昼食をはさんで午後三時過ぎまで会議室に缶詰だ。

 彩は、研修医会の記録を取りながら、他の病院の臨床研修担当の事務員と研修プログラムについて確認したり、研修医の動向を聞き取ったりと余念がない。今日の事務メンバーは顔見知りばかりで、他では聞けない踏み込んだ質問も可能だ。さらに、休憩時間は他院の指導医に積極的に話しかけて、研修における問題点などを聞いて回る。

 仁寿はというと、参加している他の研修医と親しげに研修の様子などを話していた。聞いたところ、参加している研修医のほとんどが大学の同級生だという。どうりで、和気藹々として仲がいいわけだ。途中から彩もその輪に入れてもらって、研修医たちの貴重な意見などを聞かせてもらった。

 研修医会のあとは市内の料亭で懇親会があるのだが、仁寿と彩は帰路三時間半の遠地から来ているので、それには参加せず、丁重な挨拶を済ませて会場をあとにする。

 F大の近くにある菓子店で思い出のマカロンを買い、ビジネスホテルでキャリーケースを受け取って、タクシーで新幹線の駅に向かう。まだ夕方五時前だが、外はしんしんと冷えて薄暗くなっていた。

 駅でご当地の食材が目を引くお弁当を買って、新幹線に乗る。席は、彩が窓際で、仁寿が通路側だ。
 新幹線が発車すると、二人は温かいうちにお弁当を食べ、デザートのマカロンに舌鼓をうった。旬を迎えた、全国的にも有名な苺のマカロン。この一口サイズのお菓子には、言葉にできないおいしさと幸せ、そして思い出がぎゅっと詰まっている。


「おいしいね」


 仁寿が、二個目のマカロンを頬張る。


「仁寿さん、いつも季節限定の味を買って来てくれましたよね」

「彩さんの喜ぶ顔が見たかったんだ。覚えていてくれたんだね、嬉しいなぁ」


 忘れるわけがない。年に数回しか会わないのに、大学生の仁寿がどんな気持ちでマカロンを買っていたのか。それを知った今、心まで甘い気持ちで満たされる。
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