年下研修医の極甘蜜愛
幼少期から家族ぐるみのつき合いがあり、彩と由香はお互いの性格と気心を十分過ぎるほど知り尽くしている。由香にとって、そっと寄り添ってくれる彩の存在が一番の緩衝材だった。
仕事で父親の帰りが遅い日、由香は廣崎家で夕食をいただき、お風呂にも入れてもらった。まるで家族のようにあたたかく接してくれた彩の両親と彩に、由香は今も言葉にできないほどの感謝の念を抱いている。二人の絆は、他人という言葉が不適切なほど強くて深い。
「ごめんね、由香。言わなきゃって思ってたけど、なかなか言い出すタイミングがなくて」
「だと思って、今日誘ったの」
「ありがとう」
「こっちこそ。藤崎君の肌ツヤの謎が解けてスッキリした。彩の表情も明るいし、うん。藤崎君なら、彩を任せてもよい」
「なに、そのお父さんみたいなセリフ」
声を立てて笑う彩に、由香が「彩は笑顔が似合うよ」と片目を瞑ってみせた。
「おかわり、いる?」
厨房から、マスターが酒瓶を手に尋ねる。ちょうど、二人のグラスが空になったところだった。
「ううん、今日はこれで」
由香が、マスターに笑顔で返事をする。会計を済ませて店を出ると、空には綺羅星が輝いていた。
「由香。今日は誘ってくれて、本当にありがとう」
「美味しかったね」
「うん。それに、すごく楽しかった」
「また来ようね」
「うん、今度は魚介がいいな」
「魚介かぁ、いいね。マスターのパエリア、絶対おいしいと思う」
大人二人が並んで歩くには狭い路地を進みながら、日付未定の約束をする。街の喧騒にまぎれて駅まで歩き、二人は駅前のロータリーで別れた。由香は、これから医師同士の飲み会に参加するらしい。
時間を確認して、彩は人通りの邪魔にならない場所へ移動すると、母親に電話をかけた。いつもメッセージだけのやり取りばかりだから、声を聞くのは久しぶりだ。