年下研修医の極甘蜜愛

 彩がお風呂を済ませてリビングに行くと、仁寿が冷たいハイボールを作ってくれた。キッチンには、絞りたてのライムの香りが爽やかに漂っている。ピカピカに磨かれたシンクを見て、彩は仁寿が見かけに寄らず几帳面な性格なのだと今さらながら実感する。

 リビングのソファーに座って、鼻腔を突き抜けるウイスキーの香りを堪能しながら仁寿のお風呂が終わるのを待つ。
 壁に掛けられた大画面の液晶テレビは、去年大ヒットしたアニメ映画を映していた。


 ――そういえば、地上波初放送だってだいぶ前から話題になっていたっけ。


 ソファーの前のテーブルからスマートフォンを取って、スケジュール管理アプリを立ち上げる。画面をスクロールさせて連休明けの仕事のスケジュールを確認し、重要事項を入力した。

 五年もたつとすっかり事務仕事が板について、自分が建築学科卒業だということを忘れてしまう。画面をタップして文字を打ちながら、病院に就職したばかりの日々を思い出す。

 まったく知らない医療の世界で、仕事を覚えるのに必死だったあのころ。でも、家に帰って就寝までのわずかな時間に必死に勉強して資格を取った。もちろん、大学に進学したのは建築士になりたかったからだ。資格試験を受けたのも、医局秘書を長く続ける気はなくて、転職するつもりだったから。

 文字を打つ手を止めて、何気なくテレビの画面を見る。アニメ映画は、迫力満点の戦闘シーン真っ只中だった。異形の敵と戦う主人公は、風貌がちょっと仁寿に似ている気がする。


 ――いいなぁ。


 仁寿さんの肌ツヤがいいのは、きっと自分が本当にしたい仕事に夢中になっているからじゃないかな。由香だって、つらいことも多々あるだろうに、いつも前向きで凛としている。
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