年下研修医の極甘蜜愛
彩は、机をはさんで父親の向かいに座ると、近いうちに今の職場を退職して建築士として働こうと思っていることを打ち明けた。
「今さらかな……」
「そうだな。彩が大学を卒業してもうすぐ五年か……。きっと、一人前になるまで大変だろうが、今さらなんてことはない」
「できるかなぁ」
「彩は目標を立てて努力する子だから、父さんは心配してない。この話は、仁寿君にはしたのか?」
「うん。実はね、彼がやってみたらってすすめてくれたの」
「そうだったのか。彩は、いい人に出会ったんだな。だったら悩む必要はないだろう。頑張れ、彩」
「お父さんに背中を押されると、すっごくやる気出る。ありがとう、お父さん」
「仁寿君にもちゃんと感謝の気持ちを伝えるんだぞ」
「うん」
彩がキッチンへ行くと、母親と仁寿がアイドルの話で盛りあがっていた。本人は隠しきっているつもりだが、彩は知っている。母親が、アイドルの推し活をしていることを。
「こんな年で恥ずかしいのだけど、これが楽しくて」
「いいと思いますよ。生き甲斐を持つのは大事ですよね。僕の生き甲斐は、もちろん彩さんです」
仁寿が、にっこりと彩の母親に笑いかける。
――ああ、好きだな。仁寿さんの笑顔。
彩はしばらく、二人の楽しそうな様子を眺めていた。