年下研修医の極甘蜜愛
それから二カ月ほどたった三月上旬。二人は週末の休みを利用して、飛行機での移動が必要な遠地にある仁寿の実家にいき、無事に挨拶を済ませた。
これを機に、仕事のスケジュールの合間に彩が仁寿のマンションに引っ越し、二人の新しい生活が始まる。二人で話し合って、一年後の五月に結婚式を挙げると決めた。しかし、仕事をするうえでの影響を考慮して、同棲していることは身内だけの秘密にしておく。
昼は医局秘書の仕事をこなしながら、彩は就職したころと同じように夜のわずかな時間を惜しむように建築の本を広げる。父親が以前の仕事仲間に声をかけてくれて、来年の夏から市内の設計事務所に就職できそうだ。彩の心は、素晴らしい機会を与えてくれた仁寿への感謝でいっぱいだ。だから、自然と勉強にも身が入るのだろう。
仁寿のほうも初期研修後の進路を決めて、今まで以上に仕事を頑張っている。
彩は、年度が替わるタイミングを見計らって、上司の平良に退職を考えていると告げた。医局秘書の仕事の引継ぎは、そう簡単にできるものではない。時間をかけて計画的に次の担当者へ仕事を教えていくほうが業務上の混乱がないと考えて、後任者を決めてもらおうと思ったのだ。
平良との面談で、一身上の都合では退職理由として納得してもらえなかったので、絶対に他言しないという約束で仁寿とのことを話す。結果、目玉が飛び出るくらい驚かれて、「辞める必要ないじゃないか」と泣きつかれた。
就職してから五年、様々な苦楽を共にしてきた上司だ。小さな目に涙が浮かんでいるのを見ると、後ろ髪を引かれて心が痛む。しかし、彩がやりたい仕事があるのだと打ち明けると、最後には平良も「頑張れ」と応援してくれて、速やかに後任の人選に取りかかってくれたのだった。