年下研修医の極甘蜜愛
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彩はその年の七月、無事に一級建築士の試験に合格した。これで来年から建築士として働ける。期待を胸に、医局秘書の仕事を真面目にこなしながら、密かに転職先を探す。しかし、どういう運命のいたずらか、上司が椎間板ヘルニアで戦線離脱したのを皮切りに、同僚の退職や妊娠出産などが続いて転職のタイミングを逃してしまった。
医局秘書は事務職だが、業務内容が特殊だから誰でもすぐにできる仕事ではない。特に人間関係が重要で、それなりの知識とコミュニケーション能力が必要とされるからだ。まずは、院内の医師たちとの関係の構築から始まって、そのうち院内だけではなくて外部とのつながりもできてくる。業務の内容によっては、対外的な責任も負わなくてはならない専門的な仕事だ。
真面目で慎重な性格の彩は、仕事でのミスもほとんどない。二年半たつころには、すっかり医局秘書課の中心的存在になっていて、ますます仕事を投げ出せない立場になっていた。
その間にも、仁寿が夏休みや冬休みを利用して度々病院を訪ねてきた。研修医を獲得するために、医学生向けの広報するのも医局秘書課の大事な仕事だ。他の医学生を交えて食事会をしたり、医師に頼んで勉強会を企画したり。彩と仁寿には顔を合わせる機会が多々あって、次第に「彩さん」「藤崎君」と呼び合うほど親睦を深めていった。