年下研修医の極甘蜜愛
親友、由香
時刻は午後六時半。
終日晴れの予報は大きくはずれて、昼過ぎから降りだした雨は、地面を叩きつけるような本降りになっていた。
彩は、職場の傘立てから貸出用の傘を拝借して職員通用口を出た。男性用の黒い無地のそれを広げて、雨ににじんだ歩行者用の信号が赤から青に変わると同時に小走りで横断歩道を渡る。そこで、予約しておいたタクシーに乗った。
小柄な中年の運転手が、上半身をひねって制帽の下のくぼんだ目を彩に向ける。
「ヒロサキさん?」
「はい、そうです」
「どちらまで?」
「銀天街までお願いします」
「はいよ」
目的地までは、車で十分かからないくらいの距離。駅前通りを過ぎたところでタクシーをおりて、銀天街のアーケードを歩く。水曜日の夜、足元の悪い繁華街のはずれは人通りもまばらだ。両脇の店舗はそのほとんどが、昼夜シャッターがおりたままになっている。
ポタ……ポタポタと頭に水が落ちてきて、閉じた傘を急いで開く。
さびれた商店街は雨漏りが酷くて、アーケードはその役割をまったく果たしていない。傘の下から天井をあおいで納得する。天井は穴だらけで鉄骨がむきだしだった。