年下研修医の極甘蜜愛


 ◆◇◆



 時は流れて、一年後の三月一日。
 その日は、先日の雨が嘘のように春らしい穏やかな陽気だった。仁寿と彩が出会った日と同じように、ローカルニュースのキャスターが花見日和だと朝のニュースで言っていた。季節の巡りは不変でも、ニュースキャスターの顔ぶれが当時から一新したように、日常はとどまることなく日々変化していく。

 朝七時三十分。
 医局では、いつものように朝のカンファレンスが行われていた。

 初期臨床研修最後の当直を終えた仁寿が、大きなスクリーンに電子カルテの画面やCTの画像などを映して、当直帯で受け入れた救急患者の病状と検査結果、それから急変や不穏などで対応した入院患者の状態などを報告する。要点をまとめた的確な説明や堂々とした口調は、すっかり一人前の医師そのものだ。

 仁寿だけではなく、他二名の研修医も最初の初々しさが嘘のように医師として立派に成長したと思う。それは、指導にあたった医師たちからの評価でもある。
 カンファレンスのあとそのまま朝礼にうつり、連絡事項の伝達などを済ませて、内輪だけのささやかな初期研修修了式が執り行われた。

 二年間の初期臨床研修をやり遂げ、必修科の研修に合格した三人が、みんなの前で院長から初期研修終了証を一人ずつ手渡される。当直明けの仁寿は、少しボサボサの髪にメガネという、いつもとは違う風貌で式に臨んだ。そして、医局長の篠田から、医局が揺れる大発表がなされたのはその直後。


「えっと。今日は一つ、衝撃的なお知らせがあります。突然ですが、医局秘書課の廣崎彩さんが退職されることになりました。退職日は今月末日付け。有給消化があるから、今月の十五日が最終勤務になるそうです。あと……、これも言ってもいいんですかね」


 篠田が手に持った紙を指さし、院長先生と医局秘書課課長平良の顔色をうかがう。二人が「どうぞ」というように頷くと、篠田は二度咳払いをした。


「俺も今朝、というかついさっき、朝礼前に聞いて未だに信じられないんですけど……。なんとびっくり、藤崎仁寿先生と彩さんがこのたびご結婚されるそうです」
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