年下研修医の極甘蜜愛
アーケードの途中で脇道に入って、親友と待ち合わせをしている飲食店を目指す。街灯がとぼしく、二人並んでは歩けない細い路地にその店はある。営業中と書かれた小さな看板が目印なのだが、常連客でなければ、ここが飲食店だなんてまず気がつかないだろう。
「こんばんは」
「いらっしゃい」
彩が店に入ると、オーナーが調理場から顔を出した。ハスキーボイスがかっこいい、四十歳くらいの女性だ。
「彩、こっち!」
カウンター席から、待ち合わせ相手の北川由香が手をふる。彼女とは小学校からの同級生で、高校まで一緒だった。彼女は努力に努力を重ねて夢を叶え、内科の専攻医として彩が勤める病院で日々研鑽を積んでいる。
「早かったね、由香」
「うん。今日は彩とゆっくり話しするぞーって、六時前に脱走してきた」
「そうなの? 由香が医局を出たの、全然気がつかなかったよ。上級医の先生に見つからなかった?」
「大丈夫。茅場先生が、病棟の患者さんのI.Cやってる時間を狙っての犯行だから」
「さすがだね」
「でしょ。まぁ、明日ちくりと十言くらい言われるだろうけど」
「間違いない」
彩は笑いながら由香の隣に座って、カウンターの下のカゴにハンドバッグを入れた。職場からの連絡に備えて、スマートフォンだけは目につく所に置く。
店内に、客は彩と由香の二人だけ。まったりと眠気を誘発しそうなオレンジ色の照明と絶妙な音量で流れるジャズが耳に心地いい。