年下研修医の極甘蜜愛
「今日は、なにを食べたい?」
オーナーが尋ねて、「そうねぇ」と由香が腕組みする。この店に決まったメニューはない。食べたいもの、食材、味、食感などを言えば、オーナーが勝手に作ってくれるシステムだ。オーナーが作ってくれるご飯は、どれもほっぺたが落ちるほどおいしい。
「鶏をカリッと焼いたのをお願いします。さっぱり味で」
「じゃあ、私はそんなに辛くないペペロンチーノにしようかな。あと、ピンク・レディを。彩はハイボールでいいよね?」
「うん!」
了解、と調理場からハスキーボイスが返ってくる。すぐにピンク・レディとハイボールが出てきた。二人は、グラスを軽く合わせて乾いた喉を潤す。
「うーん、生きかえる!」
「ほんとだね。ところで由香、最近ちょっと表情が暗い気がするけど、なにか困っていることがあるんじゃないの?」
「……ある。ちょっとだけ愚痴ってもいい?」
「いいよ。親友として真剣に聞くし、必要なら医局秘書として問題解決に努める」
「よし、頼んだ」
彩は、共感の相槌をうちながら由香の愚痴につき合う。
医局秘書というと雑用係だと思われがちだが、みんなの潤滑剤になるのが役割だったりする。
「聞いてくれてありがと、彩」
ひとしきり愚痴を言った由香が、すっきりとした顔をする。彼女はいつもこうだ。たまった鬱憤を吐きだして、そのあとは二度とネガティブな話はしないし引きずらない。
「どういたしまして」
「そういえば、藤崎君たちそろそろ院外研修に出るんだよね?」
「ああ……、うん」
彩は、壁の隅っこに掛けられたカレンダーに目を向けた。オーナーの予定だろうか。十月二十七日に大きな赤丸がついている。