年下研修医の極甘蜜愛
「先生、やっぱりやめませんか?」
廣崎彩は、男の目をまっすぐに見すえて言った。思いっきりにらみつけているつもりなのに、悔しいかな、相手からはにこにこと嬉しそうな笑みばかりが返ってくる。
「彩さんのその鋭い目、すごく好き」
さらにくしゃっとほころんだ顔が、仔犬みたいにかわいい。
これは、彼が生まれ持った人徳の一つだと思う。もとから柔らかくて親しみやすい雰囲気だけれど、笑うとたちまち他人の警戒心を解いてしまう。なんとも不思議な天性の魅力だ。
――いや、待って。仔犬ってなに。かわいいってなに。わたしは一体、この状況でなにを考えているのだろうか。
彩は正気を保とうと、両手で顔を覆って首を横にふった。
「手が邪魔だな。縛っちゃおうかな」
「……縛る?」
――もしかして、見かけによらずサディスト気質なの?
困惑している間に、男が馬乗りの格好で彩の骨盤を両膝でしっかりとはさむ。そして、身動きが取れない彩の両手首をブランド物の青いネクタイで一つに縛って満足そうに頷いた。
「これでよし」
「……よっ、よくありません! ほどいてください!」
彩は、自由を封じられた体をよじって必死に抵抗する。
しかし、相手は細身とはいえ身長一八〇センチ、今年二十五歳になる健康な男子だ。到底、華奢で非力な女性が力で敵うわけがない。ベッドのスプリングが軽くきしんで、縛られた両手を簡単に頭の上で固定されてしまった。
「そうだよね。こんな面白くもなんともない縛り方じゃよくないよね。彩さん、ごめん。次までにいろいろな縛り方を習得しとくよ」
「そうじゃなくて……! 縛り方なんて習得しなくていいですから、その向上心は別で使ってください。それに、次ってなんですか?」
「いつもクールな彩さんしか見ないから、新鮮でいいね。こういうの」
――話、通じず。
彩は、ごくりと生唾をのむ。動揺のあまりすっかり失念していた。藤崎仁寿が、超ポジティブで鋼鉄の心を持っている、規格外に手強い男だということを――。