年下研修医の極甘蜜愛


 ――不眠の時みたいにできない。


 先生と間違った関係を、いつまでも続けてはいけない。しかし、どう切り出せばいいのだろう。
 どんな仕事でも職場での信頼関係は大事だ。出会って五年。少しずつ築いてきた信頼関係があるから、なにに興味があるのか、将来どの科に進みたいのか、彼は初期研修についての考えや希望を忌憚なく話してくれるし、こちらも研修に係る仕事をするうえでとても助かっている。

 それに、初期研修が終わってもよそへ行かずに残ってもらうのが、病院の願いであり課題でもある。年度末になると、二年間の初期研修を無事に終了した研修医たちが巣立っていき、笑顔でそれを見送った上司が医局の隅で頭を抱える光景を毎年見て来た。

 もとより、彼はこの地に縁もゆかりもない人だ。先日職場で話した時は三年目以降も残る気でいると言っていたが、これが原因の一つになって辞められたら困る。だから、どう話しをすればいいのか悩んでしまう。


 ――でも、やっぱりおかしいよ。こんなの。


 彩の口から、小さなため息が漏れる。大丈夫、話せばきっと分かってくれる。あと数日もすれば院外研修が始まって、少なくとも半年は特別な用事がない限り顔を合わせなくて済む。半年もあれば、お互いなにもなかったように過ごせると思うし、大人だから仕事と割り切ってやっていけるはずだもの――。
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