年下研修医の極甘蜜愛
「なにがですか?」
「何気ない日常こそ幸せ。彩さんと話していると、そのとおりだなって実感する」
奥歯で噛んだトマトの果汁が、フルーツみたいに甘く口に広がる。仁寿の言葉がくすぐったくて、彩の顔がほんのり朱に染まった。
「あ、そうだ彩さん。忘れないうちに、鍵を渡しておくね」
「は、はい。すみません」
仁寿が「ごちそうさま」と言って席を立つ。そして、空いた食器をキッチンにさげて、ダイニングテーブルに二種類の鍵を置いた。エントランスと玄関の鍵だ。
「それは彩さんのだから、返さなくていいよ」
「わたしの……?」
食べかけのパンをコーヒーと一緒に飲み込んで、彩は仁寿の顔を見あげた。仁寿が、どうしたの? というように少し目を大きくする。
「わたしがここに住んだら、先生の邪魔になりませんか?」
「どうして邪魔になると思うの?」
「だって、院外研修が始まったら大変でしょう?」
「大変だろうけど、彩さんが邪魔になるなんてことはないよ。そもそも、邪魔なら一緒に住もうとは言わない」