年下研修医の極甘蜜愛
第三章

縮まる距離



「お先に失礼します。お疲れ様でした」


 十二月五日。
 彩は、昼休憩中の上司と医師たちに挨拶をして医局をあとにした。その手には、青いハンドバッグと重要書類の入ったA4サイズの茶封筒が握られている。

 医局秘書課に所属する彩は、医事課やその他の事務職員たちとは違って制服がないから、更衣室に寄って着替える必要もない。今日は院外に出なければならない業務はなく、コートの下は七分袖の白いコットンリネンのブラウスとそれに合う膝下丈の黒いフレアスカートというシンプルな装いだった。

 廊下ですれ違った院内薬局の薬剤師と軽い雑談をして、タイムカードに打刻する。職員通用口から外に出ると、冬陽にしては熱のある強い日差しがさんさんと降りそそいでいた。

 時刻は十二時二十三分。駅までは徒歩で十五分ほどだから、ゆっくり行っても待ち合わせの時間より少し早く着くだろう。


「あれぇ、彩さん。今日は半休なんだ?」


 背後から声をかけてきたのは、数カ月前に医局長に任命された外科の篠田医師三十五歳。クセ毛のようなパーマがかもしだすイマドキの外見に、濃紺のスクラブの上に羽織ったドクターコートの袖を腕の中ほどまでまくるのは、彼の通年定番スタイルだ。


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