年下研修医の極甘蜜愛
「先生と二人はちょっと」
「はぁ? どういう意味だ、こら」
おかしそうに笑う彩をどう思ったのか、篠田が「じゃあね。お疲れ様」と笑顔で言い残して、ひらひらと手を振りながら職員通用口に入っていく。その背中を見送って、彩は日傘を広げた。生成りのリネン生地にマリーゴールドがワンポイントで刺繍されたそれは、百貨店で一目惚れして買ったお気に入りだ。
じりじりと地面をこがすような日差しの中、駅前にあるコーヒー専門店を目指す。ヒールの高い靴を好まない彩の足音は、猫の忍び足のように静かだった。
――暑いなぁ。
もう十二月だというのに、晴れた日の昼間は夏と変わらない。途中でたまらずコートを脱ぐ。車通りの多い片側一車線の県道を渡って、駅へ続く小道を歩くこと十五分。彩は待ち合わせ場所のコーヒー専門店に入ると、スマートフォンの画面をタップしてお店のアプリを立ち上げた。炎天下を歩いて乾いた喉を、冷たいコーヒーで潤そうと思ったのだ。
注文カウンターに並ぶ前に一度、店内を見回す。待ち合わせ相手の姿はまだない。新商品のかわいいフラペチーノにマキアート、それからラテも魅力的だったが、結局、シンプルなドリップアイスコーヒーを注文して奥の窓際に座る。
店内は、コーヒー特有の芳香と女性たちの陽気な笑い声に満ちていた。壁に掛けられた有名なイラストレーターの絵が描かれたカレンダーを見ると、今日の日付に赤字でポイント五倍と書かれている。どおりで、平日の昼過ぎにもかかわらず繁盛しているわけだ。
コーヒーのグラスにさしたストローを唇ではさんで、外に目を向ける。大きなガラス張りの窓の向こうには、スーツ姿のサラリーマンや小さな子供を連れた女性たちが闊歩する日常的な光景が一枚絵のように広がっていた。それを眺めながら、冷たいアイスコーヒーを喉に流し込む。