年下研修医の極甘蜜愛

 店を出たところで、仁寿が彩の持っている封筒とハンドバッグを取って、空っぽになった彩の手を握る。動作があまりにも自然すぎて、手をひっこめる暇もない。彩が仁寿の顔を見あげると、ぎゅっと強い力で握られた。

 狭い道幅の路地を通って、駅の真裏にある立体駐車場へ向かう。外は、相変わらずじりじりとした日差しに照らされていた。でも、手を介して伝わる仁寿の温度は快適で、嫌味も痛みもなくそっと体にしみ込んでくる。


「救急は、やっぱり大変ですか? ほら、前に性格が救急向きじゃないって言っていたでしょう?」

「それがね、意外とやれるのかもしれない。面白いよ、すごくハードだけどね。先生たちみんな親切だし、看護師さんも専門性が高くていろいろアドバイスしてくれる。思い込みを捨てると、可能性が広がるよね」

「いい研修ができているみたいですね」

「うん。総合病院の救急を選んでよかった」


 立体駐車場前の歩行者用信号が赤に変わって、二人は大きな街路樹の下に立ち止まった。冬なのに落葉せずに生い茂った葉が、二人にそそぐ陽光を遮る。

 仁寿の前向きな考え方がうらやましくもあり、自分もそうなりたいと彩は思う。仁寿の横顔は、彩を勇気づけるように輝いて見える。
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