「こぶた」に婚活は難しい〜あなたの事なんて、狙ってませんから。〜

商店街の3人目(4)

「お隣の方は、林さんのお知り合いですか?」
と大林が声をかけた。
ハッ。存在を忘れるところだった。
「大林さん、すみません。私の勤める社員食堂がある会社の方なんです。」
大林さんに慌てて説明する。
「そうなんですね。随分気さくな間柄に見えたので。
はじめまして。大林と言います。」
大林さんは礼儀正しく挨拶した。
「高坂です。」
高坂さんは軽く会釈して、ふいっと前を見た。
あれ?いつもチャラいくらいフレンドリーな人なのに。珍しく絡んでこない。苦手なタイプなのかな。

頭に『?』が沢山浮かんできた所で長い説明がやっと終わった。ついにご飯だ!

「どこから回りますか?」
と大林さんが聞いてきた。
「ホントに私のチョイスでいいんですか?」
「はい、もちろん。楽しみにしてますよ。」
目がキラキラしちゃう。テンション上がるーーー!
「じゃあまず端から順に行きましょう!」
私達2人はお皿とスタンプ台紙を配っている列に並びに行った。大林さんは軽く高坂さんに会釈していたようだったが私は気付かなかったフリをした。

「まずは『中島精肉店』のコロッケからゲットしましょう!」
ここのコロッケは牛ひき肉を使っているのだが、少し粗挽きのため、肉の存在感がある。ジャガイモはトロトロで、クリームコロッケみたいな柔らかさが売りなのだ。
「お。お姉ちゃん。うちのコロッケを知ってるとは嬉しいねぇ。」
へへへ。当然!。
次は『魚匠』の松前漬け!
「お嬢さん。うちの松前漬けを選ぶなんて、どこで聞いたんだい。」
ご主人は多めに入れてくれた。ラッキー!
その他にも、『田村パン』の惣菜パン。『お惣菜木島』のゆず味噌焼きおにぎりなどを選んだ。
最後は有料になっちゃうけど外せない、『ラ・ポム』限定50個のシュークリーム!ゲット出来て幸せ〜〜。

大林さんはそんな私を呆れるでもなく、にこやかに一緒に回ってくれた。
「私ばかり楽しんでて、つまらなくないですか?」
「全くです。林さんがいなければ、こんなに楽しく回れなかったですよ。」
ほわー。やっぱり良い人だなあ。
「そんなふうに言って貰えて嬉しいです!じゃあ、あっちの席の空いてるとこで食べましょうか。」
と私が前に向き直った拍子に、足が何かに引っかかった。

カシャーン。カラカラ……。
倫子のお皿は手から離れ中を舞い、食べ物は飛び散り、プラスチックの皿が床で跳ねクルクルと回ってから倒れた。
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