「こぶた」に婚活は難しい〜あなたの事なんて、狙ってませんから。〜

ガーデンにて(2)

うーん。外はちょっと涼しくて、気持ちいい。今回のツアーはどの店も美味しかったなあ。

紅葉を始めた葉が光に当たってキラキラしている。
うん。楽しかった。明日からまた頑張れそうだ。

倫子は完全に目的を忘れてまったりしていた。背後に近づいてきた人がいるのも気付かずに。

「Pちゃん。」
背後から声をかけられても今回は驚きもイライラもなかった。
「高坂さん。」
コーヒーを手に持って、高坂さんが倫子の向かいに座った。
「なに、1人で黄昏れてるのかな。」
「あーー。今日は楽しかったなあって。」
公園のほうを見ながら倫子が答えた。
「高坂さんは?誰か良い人はいなかったんですか?」
高坂さんなら最後は女子に囲まれててもおかしくないのに。
「ああ。多分さっきの一件で皆に敬遠されたらしい。」
倫子は目を丸くした。
「すみません、私のせいで。」
「気にしなくていいよ。別に落ち込んでないから。」
あ~。ハイハイそうですね。貴方はモテますから。倫子は申し訳なく思うのをやめた。
そしてふと思った。
「そもそも、高坂さんが婚活ツアーに来る必要あったんですか?女性に不自由してませんよね。」
「Pちゃん。その言い方は語弊があるよ。」
「だって。」
食堂でも何度見かけたことか。男性女性に限らず1人でいた試しがない。特に女性は明らかに高坂さん狙いだったし。
「…こういうツアーに参加する女子の気持ちが知りたくてね。」
そう言って、倫子をじっと見た。
「気持ち……。」
倫子はオウム返しに答えた。
「Pちゃんはなんで参加したの?彼氏がほしいの?」
珍しく、突っ込んで聞いてくるなぁ。
「うーん。そこまで真剣ではなかったんですけど…」
倫子は実家での話をした。親戚に言われたこと。従姉妹に婚活パーティーを勧められたこと。今回のツアーが趣味と実用性を兼ね備えていたこと。
「今回、楽しめたし、良いなと思った人もいたんですけど。何だか満足しちゃって。今回はここまででいいかなって。」
今の気持ちをそのまま高坂さんに伝えた。高坂さんはいつもみたいにからかう事もなく、コーヒーを飲みながら黙って微笑みながら聞いてくれている。

(…高坂さんて、やっぱりイケメンだあ。この人の。このふわっとした表情がかっこよすぎ。人を惹きつけるってこういう事なんだな…)
そんな事を思って、自分が高坂さんを見つめてしまっていた事に倫子は気付いてない。
「…なるほど。じゃあ、今回は俺に付き合って貰っても問題ないわけだ。」
???
ほけーっとしていたのが、いきなり現実に引き戻された。
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