「こぶた」に婚活は難しい〜あなたの事なんて、狙ってませんから。〜

ガーデンにて(3)

え?今なんて?
倫子が理解出来ないでいると。
「Pちゃん。その紙に俺の名前を書いてくれない?」
「はあ?なんで?」
倫子は何を言われたのか全く理解出来なかった。
名前を書く?
「誰の?」
「俺の名前。」
「はあ?なんで?」
ボキャブラリー、カムバーック!!
頭が全くついていかない。
「なぜ?」
語彙の低さで泣けてくる。
「そりゃあ、俺がモテるからだよ。」
「…………なんて?」

気づけばいつもの高坂さんがそこにいた。肩ひじを付いてあごをのせてニヤリと笑う。
「今回俺が誰ともカップルにならなかったら、まだチャンスがあると思った女子達が俺にアクション起こしてくるのが目に見えるじゃない。そこで、Pちゃんの出番なわけ。Pちゃんとカップルになればとりあえずは誰も来ない。」
「ーいやいや。それはないでしょ!絶対に偽装だとバレますって。」
倫子は即断った。
信じる人がいるわけないじゃん。これ以上のトラブルは御免だ。
「そんな事ないと思うけど。さっきの商店街での俺の行動はかなり効いたと思うけどね。」
「!!!」
まさか!あれも計算だったってこと?一瞬でもそんな姿にときめいたなんて…バカだった…。
「…高坂さん。今回私に色んな災難が起きたと思うんですが原因がどこにあったか気づいてないんですか?」
思わず声が震える。
「あ~。Pちゃんは災難だったよね。でも、俺は悪くない。」
くうぅ~~!確かにそうだけど!そうなんだけど!!
高坂さんはあの、ふわっとした微笑みで倫子に笑いかける。
「俺に貸しがあるよね?」
……負けた……。
「…分かりましたよ。名前を書けば良いんですよね?」
半ばやけくそで紙とペンを取った。
「俺の名前間違えないでね。番号じゃなく名前で宜しく。そうそう。“高坂凌太”。それで合ってる。俺も“林倫子”っと。これでカップル成立だねー。」
高坂は終始にこやかに満足した顔で倫子を見ていた。

こうして倫子の婚活イベントは幕を閉じた……。
…うちに帰ったら、高坂人形が塵になるまで殴りつけてやる!
高坂さんの楽しそうな顔をみて誓った。
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