「こぶた」に婚活は難しい〜あなたの事なんて、狙ってませんから。〜

最悪の1人目(4)

「あれ?聞こえなかったかな?」
座席シートの背もたれに腕をのせて倫子を上から見下ろすように話しかけてくる男性が1人。
「いつまで俺を無視するつもりなのかな?ホントは気づいてるよね。」
優しい声で倫子に話しかけ、(ん?)と小首をかしげる。

ーーーすっかり忘れてた。
急にバクバクする心臓を抑えながらゆっくり頭をあげた。
一応、聞いてみる。
「…どちらかとお間違えでは?」
男性はクスクスと笑いながらさらに顔を近づけてくる。
「嫌だなあ。いくら普段はマスクで目しか見えなくても、俺がPちゃんを間違えるはずないじゃん。」
「…ですよね〜。あは。あははは。」
倫子は頬をポリポリとかきながら、明るく笑ってみせた。内心は心にびっしょりと汗をかきながら。

この男性。倫子の働く食堂の会社、堂本コーポレーションに勤める営業部の若きエース、高坂凌太(こうさかりょうた)26歳。高身長、ゆるふわの天然パーマをよくぞまとめました!と言うほど大人っぽくまとめている。その下にある顔は面長ですっと鼻筋が通っていて切れ長の目はまつ毛も長く、かなりのイケメン。

よくいるじゃない?学年に1人はいる人気者。誰にでも好かれて、いつも人に囲まれてるタイプ。
もちろん倫子の職場でも顧客にも掃除のおばちゃんにも人気第1位だ。
倫子もそのひとりだったのだが。今は…。

「…お話中申し訳ありませんけど、そろそろ移動してもらえます?」
不機嫌そうな声が隣から聞こえてきた。
私達が話していたせいで、後には行列が出来て、隣の人も降りられなくなっていた。

「す、すみません!今すぐ降りますから!」
倫子は慌ててリュックを持って外に出た。
外の駐車場には半分くらいの人がすでに出ていて、ネームプレートの色に分かれていた。
(ああ。やってしまった。これから一緒に回るのにすっかり印象悪くしゃったなあ。)
はあ。とため息か出た。
倫子の隣に座っていた男性は素早く自分のグループを見つけて合流していた。倫子も自分の色を見ると、黄色。
高坂さんは、まさか…と目で探すと紫色のグループに合流しているのを見てホッとした。

倫子も黄色グループに向かうと、隣の席の男性はグループの女性に笑顔で話しかけていた。倫子以外はオフィス勤務という感じのおしゃれでスラッと細身で、笑顔が絶えないかわいいタイプ。男性陣は1人は大人しそうなメガネの人。年齢は高そう。もう1人は正反対に小柄でかなりの童顔。スクエア型のリュックのベルトを握りしめ俯く姿は、小学生みたい。3人目は。割愛します。

まずは自己紹介でもするのかな?と思っていたら
「時間もったいないから回りながら話しましょうよ。私、イルカショーが見たいんだあ。何時からかな?」
と、すぐに動き始めた。
(隣の席の人と。なんて言ってたけど、別に行動してもいいんだな)
4人はあっという間に打ち解けたようで、倫子ともう1人の童顔の男性の事など気にかけずどんどん行ってしまった。
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