「こぶた」に婚活は難しい〜あなたの事なんて、狙ってませんから。〜

水族館の2人目(4)

倫子は呆れて言葉がでない。

(はああ?誰が最初に導火線に火をつけたと思ってんの?
見なさいよ!女子達の非難轟々の目を!誰のおかげで、こんな理不尽な怒りを買う事になったと思ってんの?気づけよ、高坂!!!)

倫子は拳をグッと握りしめ、妄想の中の高坂人形を連打した。
倫子は怒りが収まらない時、通称『仕置き部屋』にその人の人形を連れて‘お仕置き’する妄想にふける。
ふう。少しスッキリした。

しかしここは水族館。
順路は同じなのでどこまでも一緒に行動することになる。
そっちのグループが気になって、二階堂さんとの会話が全然入って来ない。あぁ、もったいない。

集合時間が近づき、皆、入り口に向かった。自分達のグループはもう戻って来ていて、ダブルデートみたいに楽しく話していた。
(私だってうまくいきそうだったのになあ。)
はあ、とため息が出た。
「林さん。」二階堂さんが話しかけてきた。
「は、はい。」
すっかり自分の世界に入ってしまった。申し訳ない。
「林さん。もし良かったら…」
二階堂さんが、ショルダーバンドをグッと握り、意を決したように話し始めた時、佐々木さんが話し始めた。

「皆様。水族館は楽しめましたか?うふふ。何だか先ほどより、親密になった方も見受けられますね。ですが、せっかくの出会いの場なので、まだお話されてない方もいると思いますので、バスの席替えをしたいと思います。このように、バスを降りるたびに席替えを行いますので、色々な方とお話して、交流を深めて下さいね。」
佐々木さんはバスの入り口に立つと、棒が入った2つの筒を見せた。
「乗り込む前に、男性は青い筒。女性はピンクの筒から棒を1本取って下さい。付いてる番号が席になります。あ、棒は回収ボックスに入れて下さいねぇ。」

皆が順々に棒を引き、バスに乗り込んでいく。
倫子は二階堂さんのほうをむいて
「ありがとうございました。水族館楽しかったです。また機会があればお話しましょうね!」
とにっこりして、バスに向かった。
「あ……。」
なんか言いたげだったが、まあ、また話す時間はある。

どうか、次も良い人に会えますように!

倫子はえい!と棒を引いた。

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