天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 ぐっと喉が鳴った。
 俺は両手で顔を覆い、「はー」と息を長く吐く。

「志季子。俺、まだ約束守れてないよ」

 声が掠れていた。こんなに情けない声を出すなんて、生まれて初めてだ。

「君のことお姫様にするって約束しただろ?」

 手を放す。志季子の瞳は閉じられたままだ。
 俺はその目元を撫でる。

「志季子」

 気が付けば、そっと唇に指先で触れていた。そのままキスを落とす。少しかさついた、柔らかな唇。

「愛してる」

 唇を重ねたまま、そう口を動かした。
 小さな、微かな呼吸が返ってくる。
 ハッと彼女の瞳を覗き込む。
 薄い瞼が微かに震える。

「志季子?」

 静かな病室には、モニターの機械音だけが響いている。
 俺はぐっと唇を噛み、じっと彼女のかんばせを見つめた。白い肌、黒い髪にまつ毛、唇だけがほんのり赤い。

「起きて」

 頬を優しく撫で、もう一度キスを落とす。
 起きてくれ、目を覚まして。
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