天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「いばら姫だ」
「白雪姫のほうじゃない?」
「すっご、キスで目を覚ますって本当にあるんだ」
私は顔どころか耳や首まで真っ赤になっている自覚がある。ちらっと鏡を見れば、白いドレスに真っ赤な私。紅白だ……ってそれはどうでもよくて。
「ち、違うの。タイミングが合って、その、目が開けなかっただけで、意識はときどき戻っていて」
そして、声だけが聞こえていた。
私をくるおしく呼ぶ宗司さんの声。
愛していると飽きもせず繰り返す彼の声を聞くたびに、目を覚まさなきゃと思った。
彼の名前を呼びたいって。
「というか、亜香里。いったいどこからそれを聞いたの?」
「噂よ。なんでも、香月先生がのろけていたのを聞いたとか」
私は長くため息をつき、手で顔を仰ぐ。全く、暑いったら。
「それにしても、キスで目覚める、かあ」
感慨深そうに同級生の1人が言った。
「運命だ」
「だね、運命だ。運命の人だよそれは」
口々に言われ、恥ずかしくって頭を抱えたくなる。
でも髪はとってもきれいにセットしてもらっているしそうもできない、と唇をもにゃもにゃさせながら視線をうろつかせているとコンコンコンとノックの音がした。
スタッフかな、と助け船が来た気分で「はい、どうぞ」と返事をする。けれどスタッフと入ってきたのは宗司さんだった。
「志季子、写真を……ああ、志季子のお友達ですか。今日はどうもありがとうございます」
社会人的微笑みを浮かべ宗司さんが言うと、同級生たちが黄色い声を上げる。亜香里を除いて、というところだけれど。彼女は肩をすくめて立ち上がり、「香月先生」と微笑んだ。
「どうした?」
「約束、守ってくれてありがとうございます」
一拍置いて、続けた。
「志季子をお姫様にしてくれるって約束」
宗司さんは視線を真剣なものにして頷く。そうして私の手を取り、立ち上がらせた。
「一生をかけて守ります」
それは約束のとこだろうか、私のことだろうか。目を瞬き彼を見上げると、亜香里はにこっと笑った。その目で涙がキラリ、私は目を丸くする。
「それと、志季子を助けてくれてありがとうございました」
宗司さんは小さく目を瞠り、首を振った。
「俺だけじゃないよ。皆がいたから、彼女を助けられた」
亜香里はへにゃりと笑い、つうっと涙を頬に流す。
たまらなくなった私はぎゅっと眉を寄せて亜香里のもとに走り、彼女を抱きしめる。
頬が濡れていく。
そんな私たちを同級生もわんわん泣いて抱きしめてくる。結局、私は写真撮影前におもいっきりメイクしてもらいなおしたのだった。