天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「……真似するな」
「いや、食べるタイミングなんだからいただきますは言うでしょう? 先生こそ途中だったのに」
「仕切り直したいタイプなんだよ、俺は」
「そうですか。……あ」
私はぽん、と手を叩き微笑む。
「先生、点滴のほうですが効果出てますね。赤沈、数値改善してました」
赤沈とは、赤血球が沈む速度を調べる検査だ。炎症があると、タンパク質が反応して数値が上がる。
「そうか」
「少しずつ、減薬チャレンジしてみましょうか」
「……任せる」
彼はお味噌汁を飲み、微かに目を伏せる。
人としてはともかく、医師としては信頼されている。そのことがやけに誇らしい。……と思っていたら。
「人間としては微妙だが、いちドクターとしての君は信頼に足る」
「わざわざそれ口に出すかしら」
「顔が得意げだったからムカついたんだ」
「ああそうですか」
唇を尖らせ、茄子を箸でつかみつつ、彼をちらっと見る。
まあ、口ではなんだかんだ言いつつ、根はいい人なんだろう。さっきのも、照れ隠しの可能性が、ちょっとだけあるかもしれない……ないか、やっぱり。