天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「違う。車くらい出す。持ち帰るんだろう。また庭をえっちらおっちら、運ぶ気か」
「……私の聞き間違いでしょうか?」
「聴力検査をしたいなら勝手にするといい」
俺はそう言いながら「五分待て」と告げて自室に戻り、手早く着替えて玄関に向かう。吉武はぽかんと立ちすくんでいた。
「なにをしているんだ?」
「あ、いえ。香月先生、時々紳士的ですよね」
「俺はいつだって紳士的だろう」
呆れて言い返しつつ、一緒に玄関を出る。
吉武はヒールのあるショートブーツだ。ヒールのぶん、いつもよりほんのちょっと、顔が近い。まつげが長いんだなとか、余計な考えが湧く。
こいつが家に来て一か月ほど経つのに、こうして一緒に出掛けるのは初めてだ。冬の陽光がやけに暖かく感じる。
何で俺はこんなに吉武の言動が気にかかるんだ。
自問自答しながら飛び石の上を歩いていると、ふと、恋という一文字が浮かんだ。
「……は?」
吉武には届かないほどの、小さな低い声。ハッと頬を歪めて笑う。
まったく、そんなわけがない。
俺がこんな、がさつでデリカシーのない女に恋をするだなんて。
「こい」
吉武が急にそう発言して、飛び上がらんばかりに驚く。
もちろん、おくびにも出さないが……恋?