天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「はえ!?」
吉武の目がこれでもかというくらい大きくなる。俺は一体いま、何を言った?
覆水盆に返らずだ……俺は眉を寄せて「客観的意見だ」と続けた。
「君のがさつで雑な性格を知らない男は、君の容姿だけを見て声をかけたくなることもあるだろう、と言っている」
「はいはい、どうせがさつですよ」
吉武は口調とは逆に楽しそうに俺に言い返し、目だけで俺のアイスを見て「溶けちゃいますよ」と言った。
「あ? ああ……いただきます」
「先生って普段はほんと俺様なのに、ちょいちょいちゃんとご両親に躾けられたんだなあって育ちの良さが出ますよね」
「皮肉か、馬鹿にしているのかどっちなんだ」
「どちらでもないですよ、本心」
「ふうん」
俺は不思議に思いながらソフトクリームを一気に食べる。それをぽかんと吉武が見ていた。
「先生って意外に口が大きいですね」
「君の口が小さいんじゃないか? 溶けてるぞ」
「どうしてあなた、すぐに張り合うんですか」
「君が言い始めたんだろ」
アイスの溶け方で他人と言いあうのは初めてだ。くだらないことをしているはずなのに、どうして俺は“楽しい”と感じているんだ?
勝手に口角が上がっている。
吉武も負けじとソフトを口にする。一生懸命にアイスを食べる艶やかな唇、ちろりと覗く小さな舌。
見てはいけないものを見た気分で、俺は目を逸らした。