天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「そういえば、先生のご両親もドクターとお聞きしているのですが」
お互い食べ終わり、エスカレーターへ向かいながら吉武に言われ「ああ」と頷く。
「外科医と感染症医」
「病院にはいらっしゃらないですよね? 今は……」
「海外にいる」
「へえ、そうなんですね」
吉武は目を瞬かせた。
「どちらに? アメリカですか」
一人乗りのエスカレーターだったから、先に吉武を乗せる。振り向いて俺に首を傾げた吉武と、俺の目線は同じくらいの高さだった。
「知らないのか」
「え? はい」
ふうん、と口の中で呟いた。本当に院内の人間関係だとか噂だとか、興味がない人間なんだな。
「NGOに所属していて、今は紛争地帯の難民キャンプにいる」
「ええ、そうなんですか」
吉武が目をさらに丸くした後、二階に到着する。ここの建物の仕組みはどうやら、一階あがるごとにフロアをぐるりと回らねば上にいけないもののようだ。
面倒くさいとは思いつつ、吉武と話しているとそう苦でもない。食料品もあるんだなとフロアを見渡す。
「香月先生って、こういうお店来たことありました?」
「いや」
「へー。どうですか、面白いですか?」
にこっと微笑みかけられ、自然に頷く。
「新鮮かもしれない」
「よかった。あ、帰り、ここでジュースとか買って帰りませんか? 結構おいしいのがあって。おすすめします」
頷けば、吉武の目が柔らかく細くなる。それに合わせて心臓が切なくなった。意味が分からない。