天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

「で、あそこの研究室に顔出して口挟んで。最初は嫌味言われる程度だったんですけど、私が抵抗しなかったらどんどんエスカレートしていきました。香月先生との婚約が発表されてすぐは一瞬おとなしくなったんですけど、香月先生に私が言い付けてないと気が付くやいなや、自分の立場が上だと無様にも勘違いしたみたいで、あんなふうに威圧的に。ま、パワハラの証拠も欲しかったので全然いいんですけど」
「無様、か」
「無様でしたよね~。必死で書類かき集めて、ああはなりたくないわ」

 マグカップでブラックコーヒーを飲みながら、あっけらかんと吉武は言い放つ。

「それに、池崎先生派閥の人間の勢いそいだんだからボーナス欲しいくらいです」
「考えておく。……吉武」
「なんですか?」
「怖くなかったのか」
「なにがですか」
「あんなふうに怒鳴られて」
「先生って、チワワとかに吠えられても怖いタイプ?」

 俺は苦笑し、コーヒーを飲む。

「動物咬傷を舐めるなよ」
「あれは怖いですよね、本当に」

 そう言って目を細める吉武を俺は綺麗だと思った。彼女は強くて美しい。

 どうして気が付かなかったのだろう。
 研修医時代、俺に噛みついてきた時から、彼女はそうだった。胸を張って、凛として、自分の正義を貫く女。


※※※

 そんな吉武が、よりにもよって池崎と楽しげに会話しているのを見たのは、それこそよりにもよって、クリスマスイブの朝だった。

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