天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

「そういえば、吉武先生の論文、読みましたよ。面白かった」
「わあ、ありがとうございます」

 にこっ、と吉武が笑った。柔らかな、女らしい、がさつさのかけらもない、淑やかな微笑。

 俺に向けられたことのないもの。

 気が付けば、大きく脚を踏み出していた。何歩目かで、ふたりが振り向く。驚きでいっぱいの顔の吉武と池崎の間に踏み込み、俺は口角を上げる。

「俺の笑顔でしたら、いくらでもどうぞ」
「……先生、いつから」

 吉武の声が背中に聞こえる。俺はギュッと眉を寄せ目を閉じたくなる。この感情の名前に気が付いたからだ。

 嫉妬。
 独占欲。

 それらは、俺が吉武に抱く恋慕によって、もたらされている。
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