天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「……香月先生って、意外にやきもち焼きなんですね?」
池崎が薄く笑う。俺は鼻に皺を寄せた。
「俺のものに手を出されるのが非常に嫌いなんです」
「恋人とか?」
「病院とか」
「あなたのものではないでしょう?」
「俺のものです」
「継ぐ気もなかったくせに」
「お前に任せるよりましだ」
池崎は微かに目を眇め、ややあって立ち上がる。
「じゃあ、僕は行きます。またあとで、吉武先生」
「あ、はい……」
吉武の目がコンビニを出ていく池崎を追うのが気に食わない。
ドカっと吉武の横に腕を組み座る。
「どういうつもりだ」
「なにがですか?」
吉武はキョトンとコーヒーを飲みながら首を傾げ、続けた。
「もうちょっとで仲良くなれそうだったのに」
「君、何のために俺と婚約しているか忘れたのか」
小声で言えば、吉武はふふっと笑った。
「忘れてないですよ」
「じゃあなんで」
「あの人のほうから近づいてきたんです」
吉武が池崎を呼ぶ「あの人」という呼称には、なんの熱の色も含まれていなかった。
「おそらく、私から香月先生情報を手に入れようとしているんじゃないかと。弱みが欲しくて」
「ありえるな」
「なので逆に情報を得てやろうと思って、……あー、笑顔疲れた」
吉武は自分の頬をマッサージする。そうか、あの微笑は作られたものか。
……まあ、吉武には淑やかなんて似合わないものな。
そう思いつい笑うと、吉武は唇を尖らせる。
「いま、なにか失礼なことを想像して笑ったでしょう」
「してない。はは、うん」
「もう、ひどい」
拗ねた顔を見せる吉武がかわいくて、苦しい。
恋をしていると気が付くと、好きな女とひとつ屋根の下という状況は非常に良くなかった。