天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

「違う」

 勝手に言葉が口から飛び出した。

「違う。……好きだ」
「え?」

 俺はぽかんとしたままの吉武の手を両手で握る。

「先生?」
「違うんだ」

 俺はその手を引き、彼女を腕の中に閉じ込める。思っていた以上に細くて、力を籠めたら潰れてしまいそうで、指先が小さく震えた。

「違うのはわかりましたから、先生……? この状況は一体……?」
「愛してる」

 俺は彼女の後頭部を撫で、そのまま俺の身体に押し付ける。俺の心音が聞こえるように。

「……先生。どうかされました? なにがあったんですか?」
「そのまま聞いてくれ」

 俺はぎゅうっと彼女を抱きしめる。逃げてしまわないように、閉じ込めて。

「本当に、好きなんだ。君に恋をしている」
「は……あの、え? 以前、ガサツな女は嫌いだとおっしゃってませんでした? 百パーセント、私を愛することはないって」
「前言撤回する」
「そんな簡単に」
「すまなかった」

 俺は彼女の顔を覗き込む。
 吉武はポカンとするばかりで、その目になんの色も熱もこもっていない。
 池崎と同じ扱いか、と苦笑し、続けた。

「本当に婚約してくれないか。俺のこと、好きにさせてみせるから」
「あの……私、先生のことは好きですが、そう言った意味ではなく……ええと、ドクターとしては非常に尊敬していますし、すごい方だと。ただ、その、ええと、患者以上に見えないというか」
「見てくれ」
「無理です」
「嫌だ」

 俺は眉間にしわを寄せる。

「好きなんだ」
「気の迷いです、先生」

< 67 / 119 >

この作品をシェア

pagetop