天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「違う」
勝手に言葉が口から飛び出した。
「違う。……好きだ」
「え?」
俺はぽかんとしたままの吉武の手を両手で握る。
「先生?」
「違うんだ」
俺はその手を引き、彼女を腕の中に閉じ込める。思っていた以上に細くて、力を籠めたら潰れてしまいそうで、指先が小さく震えた。
「違うのはわかりましたから、先生……? この状況は一体……?」
「愛してる」
俺は彼女の後頭部を撫で、そのまま俺の身体に押し付ける。俺の心音が聞こえるように。
「……先生。どうかされました? なにがあったんですか?」
「そのまま聞いてくれ」
俺はぎゅうっと彼女を抱きしめる。逃げてしまわないように、閉じ込めて。
「本当に、好きなんだ。君に恋をしている」
「は……あの、え? 以前、ガサツな女は嫌いだとおっしゃってませんでした? 百パーセント、私を愛することはないって」
「前言撤回する」
「そんな簡単に」
「すまなかった」
俺は彼女の顔を覗き込む。
吉武はポカンとするばかりで、その目になんの色も熱もこもっていない。
池崎と同じ扱いか、と苦笑し、続けた。
「本当に婚約してくれないか。俺のこと、好きにさせてみせるから」
「あの……私、先生のことは好きですが、そう言った意味ではなく……ええと、ドクターとしては非常に尊敬していますし、すごい方だと。ただ、その、ええと、患者以上に見えないというか」
「見てくれ」
「無理です」
「嫌だ」
俺は眉間にしわを寄せる。
「好きなんだ」
「気の迷いです、先生」