天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「そんなんじゃない。証明する」
「できませんよ、きっと……」
呆れた口調の吉武の頬を撫で、ふと思いついて「志季子」と名前を呼ぶ。
「きゅ、急になんです」
「いや、婚約しているのに苗字で呼び合うのも変だなと気が付いたんだ。そうだろう?」
「それは……そうかもしれませんが」
「君も俺を宗司と呼ぶべきだ」
「そんな、横暴です」
「建設的な提案だ。池崎が君に近づこうとしている今、隙はなくしたほうがいい」
「そ、それはそうですが……あっ」
志季子の顔がぱっと明るくなる。
「わかりました。この告白も、池崎先生に対しより隙をなくすための演技のご提案でしたか!」
「いや、違う」
あっさりと答える。
「正真正銘、愛の告白だ。疑うなら今から婚姻届けを出してもいい……いや、出そうか。それがいいんじゃないか?」
「ちょ、ちょっと待ってください、香月先生」
「宗司」
「いやだから、こうづ……」
「宗司」
言葉を遮ると、ようやく諦めたように志季子は「宗司……さん」と口ごもるように俺を呼ぶ。
「なんだ?」
俺は目がこれでもかと細くなっているのを覚える。嬉しくて満面の笑みを浮かべているのだろう。志季子が目を丸くしている。
「せ、先生……じゃない、ええと宗司さん。その蕩けるような甘い顔は演技ですよね?」
「本心からの笑顔だ。名前を呼んでもらえたのが、ものすごく嬉しかった」
「そ、そんな。名前を呼ばれたくらいで」
「志季子。いい加減諦めろ。俺はもう君を手放さないぞ」
「ですから、横暴です」
ムッと俺を睨む志季子はとてもかわいい。俺はそのまま、ふと思いついた台詞を伝える。彼女の友人が言った言葉――。
「俺は君を“お姫さま”にしたい」