天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「どうしたの?」
「あ、いやその、わたし、なにかしましたか」
「え? ううん、なんで?」
丸椅子でくるっと反対方向を向きながら首を傾げると、彼女はホッと肩を落とした。
「志季子。彼女、池崎先生に絞られて以来、医者を見るとおびえる身体になってしまったの」
「池崎先生に?」
私は眉をしかめた。池崎先生は、少々言動に問題がある三十代の男性医師だ。
「冷たいイケメンだけど実は優しいというのがドラマでは定番なのに、池崎先生は普通に性格悪いから嫌だよね~」
ふふふと亜香里が笑い、私も苦笑し答えた。
「性格悪いというか、ナチュラルに周囲を見下しているところはあるかもね」
「ね。ただ、池崎先生って、爬虫類系イケメンじゃない?」
「ああ、細面で切れ長二重な感じの?」
「そう。顔だけはめっちゃ好みなんだ~。横顔とかすごく綺麗」
「昔から亜香里はそうよね」
苦笑しながら、川上さんと亜香里とを交互に見て、首を傾げる。
「で、なにがあったの?」
「ええとね、たまたま機嫌が悪かったんだよー。報告が細かすぎるって、電子カルテ見てわざわざ呼び出しして叱責」
亜香里の言葉に、川上さんはシュンと肩を落とす。
「わたしも悪いんです。確かに細かすぎて、先生がたお忙しいのに時間取らせちゃうし」
「でも細かく報告するよう方針出てなかったっけ?」
この方針を押し進めたのは、この病院の御曹司、有能な救急医でもある香月宗司先生だ。
あまり関わりはないけれど、関わりがないわりに仲が悪い。
というのも、私と香月先生との因縁話は研修医時代まで遡る。