天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「おう、会うのは久しぶりだな」
「ああ。それにしても、婚約したって本当なんだな。電話があったときは何事かと思ったけれど。改めておめでとう」
男性はそう言って笑い、宗司さんの肩を叩く。宗司さんも立ち上がり、男性と肩を叩きあった。
多分相当仲がいいんだと思う。私も慌てて立ち上がり頭を下げた。
いや、偽装なのにどうしてここまで。
「志季子。こいつ、高校の同級生。結婚式ではスピーチしてもらう予定だ」
「初耳だよ。あまり呑めないじゃないか……それにしても、本当に綺麗な人だな。そりゃ政略結婚なんて願い下げだな」
「あまり見るな。減る」
「減るもんじゃなしと言いたかったのに」
男性は肩を揺らしてひとしきり笑い、「では今度改めて」と手を振って歩き去っていく。
「宗司さん、勝手に結婚式の予定を決めないでいただけますか?」
「嫌だよ」
宗司さんは俺様な感じでニヤリと笑った。
ホテルに部屋を取られてなくて安心しながら旅館にもどる。そこからはなんだか普通の温泉旅行といった感じだった。
いつも私が友達としているような、気楽な温泉旅……というにはラグジュアリーすぎる旅館なのだけれど、それは置いておく。
温泉に入り、のんびりして。まあさすがに瓶の牛乳は売っていなかったから、かわりにハイビスカスティーをいただいた。
お化粧とヘアメイクが取れて浴衣になると、いつもの私に戻って来た気がした。
あれは夢だったんじゃないかってくらい……なのに、宗司さんの態度は変わらなかった。
彼は徹頭徹尾、どうしてか、私をお姫様みたいに扱った。
着飾るどころか、すっぴんなのに。
部屋の露天風呂も入ってみたいけれど、部屋から丸見えなので遠慮した。
そして。
「いたたたたた」
「さっき私に触れられたら癒されるって仰ってましたけど」
「こういうのじゃない」
私は旅館の寝室のうち一室で、浴衣でうつ伏せになった宗司さんを思い切りマッサージしていた。
なんだこの凝り、ガチガチだ。
がっしりしていて筋肉がついているのは暇があればジムに行っているからだ。
力仕事みたいなところもあるからもあるだろうが。
そしてこんなにガチガチなのはお正月からこっち、ほぼ病院に泊まり込み状態だったからだ。
「あまり素人が揉むとよくないらしいですが、これはね、いくらなんでもって感じですよ」
ぎゅーっと宗司さんの背中を揉む。うう、と彼は声を漏らし、それから顔を横に向けた。
「……なあ志季子サン。そろそろ俺から下りてくれないか?」
「なんでですか」
「好きな女が俺の尻の上に薄着で座っているのは、さすがに誘われているのか迷う」