天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
私が駆け寄る前に、ゆーちゃんこと鴻上優駿が私のそばまで小走りでやってくる。
「メールとかSNSでは連絡とってたけど、こうして会うのは久しぶりだよな」
「だねえ。大学卒業以来? アメリカはどうだった?」
ゆーちゃんは小学校以来の幼馴染。
高校は離れてしまったけれど、実家は近いし、大学も違うといえど同じ医師の道を志したこともあり、こまめに連絡を取っていた。
ただ、彼は大学卒業後すぐアメリカに留学していたため、直接会うのは本当に数年ぶりだ。
心臓外科医としてあちらで頑張っていると聞いていた。
「とってもいい勉強になったよ」
そう言って笑う彼を、通りすがるナースも患者も、ガラス越しのカフェ店員もぽうっと見つめている。
私は思わず苦笑した。
ゆーちゃんはかなり端整な爽やか系好青年なのだった。香月先生とはまた違うタイプのスポーツマン系というか。
野球ならキャッチャーしてそうだしサッカーならキーパーしていそうなちょっと熱血を感じるまっすぐな彼は、実際にはバレー部のキャプテンだった。
「ていうか、どうしてここに?」
私は彼を見上げつつ首を傾げる。というか、白衣だしスクラブ着ているし……て、ことは?
「びっくりさせたくて黙っていたんだけど、実は今年からここで勤務することになったんだ。向こうとの調整とかで着任が遅くなったんだけど」
「本当? 嬉しい」
私は自然と頬をほころばせ、彼に向かって握手しようと手を伸ばす。と、背後から伸びてきた手が先にゆーちゃんの手を掴む。
「俺の婚約者と親しいようですね、鴻上先生」
頭の上から降って来た、ゆーちゃんと握手している手の持ち主はなんだか不機嫌そうだった。
「香月先生」
ゆーちゃんがびっくりした声で宗司さんの顔を見る。それから私を見て、目をさらに丸くした。
「ええっ? 志季子、香月先生と結婚するのか?」
「ゆ、ゆーちゃん。これには色々と複雑な」
「複雑で緻密な愛が絡んでいてな、余人が入る余地がないくらいに」
ややこしくなることを宗司さんが言って、ようやくゆーちゃんから手を放す。ゆーちゃんは私と宗司さんを交互に見たあと、腕を組み不思議そうに首を傾げた。
「本当に? 志季子」
「あー……えっとねえ」
「納得いかないなあ」
ゆーちゃんは表情を変えないまま続ける。
「香月先生って、志季子の好きになるタイプじゃないよな」