天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「……別に、怖くはないです」
しゃくりあげながら言い「でも」と続けた。
「すごく可愛い人でした。きっと、男の人なら十人が十人、彼女のことを好きになる」
「他のやつのことなんか知るか。俺は君が好きなんだから。他のやつの考えなんか、これっぽっちも関係ないな」
宗司さんはそう言いながらふと「ん?」と眉を寄せた。
「その偽許嫁の名前、分かるか?」
「はい。ええっと、姫内さん……」
「……知ってるやつだ。断言しておくと何の関係もない」
私は小さく頷いた。さすがにもう、疑わない。
「俺の幼稚園からの同級生の妹で、少々思い込みが激しいタイプというか……俺に接近しないよう弁護士通して念書まで書かせた。全く、池崎の奴、どこから探してきたんだか」
「ええっ」
驚きつつも納得する。彼女の気持ち自体は本物だったのか。
「あー……焦った。君が医局にいないときも焦ったけど、泣かせたときは心臓止まりかけた」
「本当ですか?」
「本当だよ。好きな女が泣くのって、あんなに精神的にダメージがあるんだな。知らなかった」
彼は私の耳をくすぐる。それが心地よくて、目を細めた拍子に涙がぽろっと零れた。
宗司さんがまた慌てて、私は「ふふ」と笑った。そんな私を見て、宗司さんはホッと口元を緩める。
自然と唇が重なった。触れるだけのそれ、何度もキスされてその度に幸福で胸が温かい。
「ね、好きです」
キスとキスの合間に、小さく口にする。
「──志季子? いまなんて」
「好き、って言いました」
「俺のことを?」
「……普段自信満々なくせに、どうしてそこで弱気なんですか」
「好きすぎて不安なんだよ」
宗司さんはじっと私を見た後、前髪をかき上げて運転席のシートに身体を預けた。
「あー……」
「宗司さん、大丈夫ですか? 体調が」
心配になり、シートベルトを外し彼の方に身体を向けると、宗司さんは「ああ」と頷き、さっさと運転席のドアを開いて車を出た。
よほど体調が悪いのかと私も降りようとドアハンドルに手をかけた瞬間、大きくドアが開かれ、あっという間に宗司さんに担ぎ上げあられた。
肩の上に、荷物みたいに!
「ちょ、宗司さん。なにをしているんですか」
じたばた暴れているのに、彼はものともしない。